「ジャンプ」や「クルクル回る」には理由がある!子供の気になる行動を「感覚統合」で読み解く

児童発達関連

「この子、よくジャンプしてるな..」
「よくクルクル回るな..」
「壁に体を擦り付けて歩く事多いな..」
「机をバンバン叩いていつも怒られているな..」

など子供の何気ない行動に疑問を感じる事はありませんか?
それが過剰になり時には怒ってしまう事も?
実は、それ子供が無意識に行っている感覚調整かもしれないです。
このような動きは単なる遊びではなく、体調整の為の「感覚統合」というセルフケアです。

子供は成長に合わせて様々な感覚を使って、自身の体の動かし方や感じ方を調整しています。
また感覚には成長のタイミングや段階があり、それに合わせてボディイメージを作っていきます。

この記事では子供が行っている動きに対してどのような感覚の調整がされているかを解説し、子供の見る視点の一つのヒントになります。

感覚とは

「感覚」と聞いて、思い浮かびやすいのは視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの5感ではないでしょうか?
実はこれらの他にも人間の感覚には前庭覚・固有受容覚などの感覚があります。この二つを加えた7つの感覚の中でも触覚・固有感覚・前庭感覚の3つが体のボディイメージ構築(いわゆる姿勢や運動する時の体のプログラミング、姿勢制御など)に必要な感覚となっております。

感覚統合とは

感覚統合という言葉は、実は昔から存在しています。米国の作業療法士であるエアーズ博士は、
人間の発達や行動を、脳における感覚情報の統合という視点から捉えて感覚統合理論を作りました。
感覚統合とは上記で示した感覚を統合つまり、脳の中でまとめて整理することにより目的に合わせた、適切な行動が出来るようになるという事です。
また、感覚統合理論では感覚は積み木のように積み上げるように発達すると言われており、子供自身が大人に一方的に教え込まれる事なく自分の力で積み上げる事を重視しております。
そのため、感覚統合の過程は子供の主体的な遊びの中から育まれる必要があります。

感覚の種類

1. 【比較一覧表】3つの基礎感覚

感覚の名前直感イメージ感じる場所
(受容器)
わかること主な役割・機能
  触覚さわる
触れられる
皮膚(ひふ)物の形、硬さ
温度、痛み
自分と他人の
境界を作る、安心感、愛着形成
  固有感覚位置・力加減筋肉・腱手足曲げ伸ばし
力の入れ具合
スムーズな
動作、道具の
コントロール
  前庭感覚バランス・揺れ耳の奥(前庭)体の傾き、
スピード、回転
姿勢の安定、
動くものを目で追う力

さらに詳しい解説はこちら
【体を整える為に超重要!?感覚3種類①触覚・固有受容覚(体性感覚)編】
【体を整えるのに超重要!?感覚3種類②前庭感覚編】をご参照ください

感覚を入れると脳はどうなるか(脳内の交通整理)

子供たちが不思議な動きをするとき、脳の中では「覚醒度(かくせいど)」という、いわば脳の元気メーターを調整する交通整理が行われています。

脳は、外からの刺激が少なすぎると「退屈でフリーズ」し、多すぎると「パニックで爆発」してしまいます。ジャンプや回転などの動きは、このメーターを「ちょうどいい(集中しやすい)状態」に保つための、脳への直接的な命令なのです。

1. 脳の「アクセル」を入れる(覚醒を上げる)

  • 動き: クルクル回る、激しくジャンプする、大きな声を出す
  • 脳の状態: 脳がぼんやりして眠い状態、あるいは情報が足りなくて「空腹」な状態。
  • 入る刺激: 前庭感覚(回転・スピード)、固有感覚(強い衝撃)
  • 結果: 刺激が「目覚まし時計」になり、脳のスイッチがオンになります。これで初めて、周りの話が耳に入ったり、集中したりできるようになります。

2. 脳の「ブレーキ」をかける(覚醒を下げる)

  • 動き: 壁に体をこすりつける、隅っこに潜り込む、ギュッと抱きつく
  • 脳の状態: 周りの音がうるさすぎたり、予定変更で不安だったりして、脳が「パニック寸前」の状態。
  • 入る刺激: 触覚(深い圧迫)、固有感覚(持続的な力)
  • 結果: 皮膚や筋肉への安定した刺激が「おもり」の役割を果たし、荒ぶった神経を落ち着かせます。嵐のような脳内を静め、安心感を取り戻している最中です。

3. 脳の「ボディマップ」を更新する(自分をはっきりさせる)

  • 動き: 机をバンバン叩く、高い所から飛び降りる
  • 脳の状態: 自分の体の輪郭がぼやけて、「どこに自分がいるか不安」な状態。
  • 入る刺激: 固有感覚(筋肉への強い抵抗)、触覚(衝撃)
  • 結果: 強い刺激によって脳に「ここが君の手だよ!」「ここに足があるよ!」とはっきりした信号が送られます。自分の存在がクリアになることで、不安が消え、自信を持って動けるようになります。

このように、子供の行動はすべて「脳をちょうどいい状態にチューニングするためのセルフケア」です。

「やめなさい!」と止めることは、脳にとっての安定剤を奪うことと同じかもしれません。まずは「今、この子の脳はアクセルを求めているのかな?それともブレーキかな?」と観察することから始めてみましょう。

例)これらの感覚を踏まえて行動を見てみると

行動(出力)主な感覚脳が求めている
「報酬」
代替・調整案の
ヒント

ジャンプ・足踏み
固有受容覚重力とその反発で自分の体の位置を確認するトランポリン・重り
クルクル回る前庭感覚回る刺激で、覚醒度を上げている。回転椅子・ブランコ
壁への体の擦り付け触覚・固有受容覚皮膚への接触刺激と体の位置を確認し、自分と外界の境界の確認重い毛布・マッサージ
机を叩く固有受容覚・聴覚掌の強い衝撃とリズムのある音の入力で安定粘土遊び・相撲
太鼓叩き
高い所からジャンプ固有受容覚・前庭覚高い所から落ちるという刺激で覚醒度を上げている飛び込みマット
ボルダリング
部屋を歩き回る前庭覚・固有受容覚動きを止めると覚醒度が下がる為、感覚を入れる事で維持バランスボール
立位デスク

さまざまな感覚が使われており、自己調整を図るために行われています。

記事のまとめ:子供の「気になる動き」の正体

  • 行動は「セルフケア」である
    ジャンプや回転などの一見不可解な行動は、子供が自分の脳と体を整えるために無意識に行っている「感覚調整」です。
  • 脳の「交通整理」と「栄養補給」
    脳には「ちょうどいい覚醒状態」が必要です。動きを通じて、ぼんやりした脳に「アクセル(覚醒)」を入れ、パニック寸前の脳に「ブレーキ(鎮静)」をかけています。
  • 3つの基礎感覚が「自分」を作る 「触覚・固有受容覚・前庭感覚」の3つを統合することで、自分の体の輪郭(ボディイメージ)をはっきりさせ、安心感やスムーズな動きを獲得します。
  • 「修正」ではなく「代替」を
    無理に止めると脳の安定剤を奪うことになります。「今、何の感覚を求めているか?」を観察し、トランポリンやマッサージなど、より安全で適切な**「代わりの食事(刺激)」**を提案することが重要です。

感覚を理解する事で見る視点が変わる

子供たちの不思議な動き。それは、周りを困らせるためではなく、「自分の体を一生懸命に使いこなそうとしている証拠」です。大人にとっての「気になる行動」の裏側には、子供が自分自身で心と体を整えようとする、前向きな理由が隠れています。「どうして落ち着きがないんだろう」「周りに迷惑をかけて申し訳ない」と、これまでお子さんの動きを「修正すべき問題」として捉えている可能性があります。しかし、お子さんの内側にある欲求に目を向けると、景色は少しずつ変わって見えてきます。それは、お腹が空いたときに泣く赤ちゃんの声と同じように、「脳が必要な栄養を求めている切実なサイン」として受け取る事が可能です。

私たちは、空腹で泣いている子を「泣くのをやめなさい」と叱ることはありません。まずは何かを食べさせて、お腹を満たしてあげるはずです。感覚の調整もそれと同じです。お子さんが壁に体を擦り付けたり、机を叩いたりしているとき、それは脳が自分を安定させるための「食事」をしている最中だと捉える事も出来ます。この「感覚の食欲」が満たされないまま、無理に動きだけを止めてしまうと、お子さんの脳はますます不安になり、別の激しい行動でその穴を埋めようとしてしまいます。

子供がどんな刺激に心地よさを感じ、どんな瞬間にふっと表情が和らぐのか。その小さな変化を観察し、安心できる環境を一緒に探していく過程こそが、子供のボディイメージを育て、自信へと繋がる最短ルートになります。視点を変える事で、一つ一つの行動が成長のための必要なプロセスとして観察する一歩となれると考えています。





参考・引用文献
【子ども理解からはじめる感覚統合遊び保育者と作業療法士のコラボレーション】加藤 寿宏 監修

【感覚・動作アセスメントマニュアル】著者 岩永 竜一郎

【運動の不器用さがある子供へのアプローチ】 東恩納 拓也

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