集団生活での頻尿への焦りを安心に変える!作業療法士が教える、おうちの外で子どもを支える「チーム連携術」【連携編】

児童発達関連

忙しい親御さんへ:この記事の要約

おうちの外(学校や習い事)で、子ども達は親の知らないところで社会適応を必死に頑張っています。その緊張や焦りが「過敏な尿意センサー」のトリガーになっている場合、親御さんがすべきは学校への「要求」ではなく、子どもの「心の通訳」になることです。

本記事では、多忙な先生と対立せず、明日から子どもが圧倒的な安心感を得られる「作業療法士流の連携ステップ」を3つに凝縮して解説します。

  • 1. 子どもの緊張を可視化する 「排尿スケジュール」を使い、どこに緊張のトリガーがあるかを親子で見える化します(※フォーマットのダウンロードあり)。
  • 2. 先生を「チーム」に巻き込む伝え方 「自由にトイレに行かせて」という要求はNG。「この子は〇〇な性格なので、おうちでの成功例である〇〇な声かけを試していただけませんか?」と、トリガーと対策をセットで「通訳」します。
  • 3. 負担をかけない合理的配慮とカモフラージュ術
    • 座席の配慮: 「廊下側の一番後ろの席」へ配置。周囲の視線を浴びずに離席できる安心感が、尿意自体を鎮めます。
    • 特別扱いの防止: 「どうしても我慢できないときは静かにトイレに行っていいよ」というクラス全体のルールとして全体アナウンスしてもらい、特定の子が浮かないようにカモフラージュします。

【どうしても改善しない・話が通らないときは?】 2〜3週間ケアを続けても変化がない場合や、学校側の理解が得られない場合は、抱え込まずに医療機関や児童発達支援センターなどの「専門機関」を活用し、関係機関を動かすための**「公的な後ろ盾(エビデンス)を手に入れましょう!

学校のイベントや発表会大丈夫かな~?

心因性の頻尿については、別の記事で紹介していきました。

お家での関わり方や声掛け、親御さんの張りつめない姿勢や心持ちなどを実践できる内容に関しては、こちらをご参照ください。
「うちの子、トイレが近すぎる?」知っておきたい心因性頻尿と、心をラクにする親の視点【安心編】
「何もしないで見守る」ってどういうこと?作業療法士が教える、心因性頻尿の子どもが安心する声かけと感覚遊び 【関わり編】

では、お家での対応以外で子ども達は学校や習い事など、親が知らない部分で社会適応を頑張っている場面があります。

その場面で頻尿に困っている場合はどうしよう?と感じる親御さんもいらっしゃると思います。

今回はこの学校や習い事などの場面の連携について作業療法士流の考え方をお教えします。

まずは、子どもの排尿の状況を一緒に把握しよう!

もちろん、親御さんは子どもの状況を把握していると思います。

では、ここでいう把握というのは、お家以外の場所で、どの時間帯で、どのシチュエーションで、どんな気持ちになったら、など具体的に頻尿になりそうな状況を把握する事です。

じゃあどうやるの?と思われると思いますが、作業療法士は以下の方法で状況を把握します。

以下画像が一例です。

このように、子どもと一緒に思い返しながら、つけていくと、子どもがどこに緊張しているか、頑張ろうとしているかが可視化(見えるように)なっていきます。

ここでのポイントは、トイレに行きたくなった場面や時間だけをつけていくのではなく、どんな気持ちだったか、どんな不安や緊張があるのかなどを聞き取るとより、子どもの社会適応に対する臨場感が伝わります。話を聞いていると褒めポイントがかなり多い事の気づきにもなりますよ。

必要であれば、下記からこの書式をダウンロードしてください。

Check
[日本泌尿器科学会]の公式ガイドラインでも、受診の際には、いつトイレに行ってどれくらい出たかを記録する「排尿日誌」をつけることが推奨されています。日誌をつけることで、お医者さんも正確な診断がしやすくなります。 ※具体的な頻尿の基準や排尿日誌のフォーマットなどは、日本泌尿器科学会が一般向けに公開している「こんな症状があったら:頻尿(尿が近い、回数が多い)」のページにも詳しく記載されています

権利擁護を把握しよう!

専門用語で「権利擁護(アドボカシー)」という大切な視点があります。難しく捉える必要はなく、ざっくり言うと「子どもが自分らしく安心して過ごすために、『こうしたい』『こういう対応をしてほしい』逆もあり、『こういう事はしてほしくない』という本音を周囲に大切にしてもらうこと」です。

感受性が豊かで優しい子どもほど、学校での不安や「実はこれが苦手」という本音を、自分で言葉にして先生に伝えることが苦手です。言葉にできないストレスが、結果として「尿意(頻尿)」という体のサインになって表れていることも少なくありません。

だからこそ、親御さんがおうちでお子さんの本音をすくい上げ、学校へ届ける「心の通訳さん」になってあげてください。

明日からの実践:子どもの「通訳さん」になるコツ

学校の先生と戦うのではなく、「一緒に子どもを支えるチーム」になるための伝え方の工夫です。

  • 学校に「要求」するのではなく「通訳」として伝える
    • ❌ 「頻尿なので、トイレに自由に行かせてください」
    • 「この子、実は『次の準備に遅れたらどうしよう』と緊張しやすい優しい性格なんです。今、その焦りがおしっこの回数に出てしまっていて。おうちでは『自分のペースでいいよ。どうする?』と声をかけると安心するので、学校でも一言添えていただけると緊張がほぐれるみたいなんです。先生、少しだけ力を貸していただけませんか?」

このように「子どもの性格のトリガー(焦りやすい場面)」と「安心する声かけ(おうちでの成功例)」をセットで通訳してあげると、担任の先生も明日から具体的にどう動けばいいかが分かり、心強い味方になってくれます。

親御さんが「何があってもあなたの味方だよ」と寄り添い、周囲との架け橋になってあげること。その安心感こそが、子どもの自尊心を育て、過敏になった尿意センサーを優しく鎮めていきます。

連携する相手を知ろう!

作業療法士として、連携は必須業務であり、業務倫理として作業療法士は連携のプロと謳っています。
その上で外部のスタッフと連携する時に、一番大切にしている視点は、相手の視点に立ち、相手の業務を把握するです。

しかし、上手くいかない事の連続でした。どうしても、連携する時に、「こっち(作業療法士)はここまでやってるんだから、あっち(連携相手)はここまでやるべき」という感覚に陥ります。私は経験上何度もこの感覚を土台に連携しようとし、逆の結果になった事がとても多くあります。

とても、軽薄で浅はかな態度だと反省しています。。

ここで、この記事を見ている方々に失敗しないでほしいという思いでお伝えするのは、協力してもらう相手の大変さを理解していく事です。

仮に相手を学校の先生と仮定してお話します。

一見すると、「学校の先生は、生徒を見守るのが仕事じゃないの?」という感覚も抱かれると思いますが、学校の先生は常に多忙極まる業務状況です。

法令等で学校に義務付けられている業務等(一覧)

文部科学省の過去資料にも掲載されているようにざっくり業務内容をみるだけでも、多忙です。

その中で、

親(自分の子どもを安心して学校生活を送らせたい)≠ 先生(学校のカリキュラムや担当している複数の生徒の指導を安定して遂行したい)

という構造になりやすく、話が通らないという結果に終わる可能性になります。
ただ、実際はそういう事ではなく、お互いの認識している問題の階層が違うという視点の違いから生じる事があります。これを私たち業界では「信念対立」と言ったりもします。

この問題視点の違いは立場状、必然の事なんだという事を理解する事から始めてください。
目的は、子どもが安心した学校生活や習い事などを送る為です。チューニングを合わせる事は近道だと認識してください。

連携相手への伝え方を工夫しよう!

ここまで来ると、次は相手に何を協力してくれるかを伝える段階です。

伝える方法はパターンがあります。私の経験上、上手くいきやすい方法をお教えします。

① 日々作成している排尿のスケジュールを提出する
② その中に記載している権利擁護(どういう支援をしてほしいか)を説明する
③ ①、②を説明し終えた後、相手の業務の大変さを聞き取る
④ 聞き終えた後、こちら側のやってほしい事と相手側の難しい事の整理をする
⑤ 最低限ここまではやってほしい所を提示する

この順番で話を進めていくと、比較的連携は進みやすいです。
何度もお伝えしますが、どのような相手にも「ここまでやるのは当たり前」のスタンスだと失敗がしやすいです。それはお願いごとの内容よりも話す相手の負の感情と態度が伝わってしまう為、上手くいかないです。

POINT 相手へ要望を伝えても中々了承が取れない時!

 私の部下や若いスタッフでよく起こる事ですが、上記の①~⑤の段階で話す前に、「こちらに頼む前に自分達の所から整理してきてください」と言われて落ち込んでいるスタッフをみる事が多々あります。
もし、連携相手から「これはお家で解決するものです」などと言われた場合は、
日本泌尿器科学会の「排尿日誌」や私が提案している排尿スケジュールの作成時間をメモっておいてください。

子どもと一緒に作成した頻度と経過時間を説明し、この時間子どもと培って完成したツールという事を再度伝える事が大切です。
先にも説明しましたが、こちらが相手の事を知らないのと一緒で相手もこちらのすべてを知っているわけではけしてありません。なので、相手に伝わらない場合はこちらが日ごろどれだけ努力しているかを開示してください。
連携の上でも「排尿日誌」や「排尿スケジュール」は重要なツールであり、親御さんの努力の担保にもなります。

合理的配慮としての自由な離席の提案方法

学校連携の一つとして、子どもが「授業中でも、尿意を感じたら先生に怒られることなくトイレに行ける環境(自由な離席)」を作ることが挙げられます。現在、学校教育の現場では法律(障害者差別解消法)に基づき、困りごとのあるお子さんへの「合理的配慮(その子がみんなと同じように学ぶための個別調整)」を行うことが義務付けられています。

ただし、ここで大切なポイントがあります。先生に対して「法律で合理的配慮が義務化されているので、自由にトイレに行かせてください!」と直球で要求するのは避けましょう。多忙な先生の心に防衛線が張られてしまいます。

座席位置の配慮

「いつでもすぐに出られるように、廊下側の、一番後ろの席にしてもらうことは可能でしょうか」と相談します。これだけで、「みんなの視線を浴びずに外に出られる」という圧倒的な安心感が生まれ、結果として尿意自体が起きにくくなります。

他のおこさんから見られる「特別扱い」を防ぐカモフラージュ術

他のお子さんから「なんで〇〇君だけ自由に立っていいの?」と言われないよう、先生には「クラス全体のルールとして『どうしても我慢できないときは、静かにトイレに行っていいよ』と最初に全体アナウンスしてもらうことはできますか?」と相談してみるのがおすすめです。

専門機関を活用するタイミング

「学校の先生と協力は取れたけど、なかなか改善が得られない…」
「スケジュールをつけて声かけを変えてみたけれど、子どもの表情がまだ硬い…」

そんなときは、親御さんだけで抱え込まず、医療機関(小児科や小児泌尿器科)や、児童発達支援センターなどの「専門機関」を活用するタイミングです。

ここで知っておいていただきたいのは、病院に行くのは「症状が重くなってから行く最終手段」ではないということです。作業療法士の視点からお伝えすると、専門機関を利用する最大のメリットは、『関係機関を味方に動かすための、公的なエビデンス(後ろ盾)を手に入れること』にあります。

以下の項目で悩まれていたら専門機関の活用をおすすめします。

日常生活や学習に明らかな支障が出ているとき
授業中や習い事中に何度もトイレに行くことで勉強に遅れが出たり、本人が「トイレが怖くて学校に行きたくない」と言い始めたりした場合です。

おうちでの「引き算のケア」を2〜3週間続けても変化がないとき
声かけを「どうする?」に変え、感覚遊びを取り入れても、子どもの焦燥感や頻尿の回数に全く変化が見られない場合は、背景に別の要因(器質的な問題や、より深い心理的ストレス)が隠れている可能性があります。

連携相手側のルールが厳格で、配慮が難しいとき
「お家での問題です」「ルールですから」と言われてしまった場合、親御さん個人の言葉だけで連携相手を動かすのは限界があります。

お家での関わり方や声掛け、親御さんの張りつめない姿勢や心持ちなどを実践できる内容に関しては、こちらをご参照ください。
「うちの子、トイレが近すぎる?」知っておきたい心因性頻尿と、心をラクにする親の視点【安心編】
「何もしないで見守る」ってどういうこと?作業療法士が教える、心因性頻尿の子どもが安心する声かけと感覚遊び 【関わり編】

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