感覚には人それぞれ感じ方がある!感覚の低反応・過反応!

児童発達関連

記事の要約:子どもの行動と感覚の仕組み

  • 感覚センサーの役割:感覚とは体の内外から刺激を受け取り、脳で感じやすくするための「センサー」の役割を果たしています。
  • 2つの大きな分類:周囲を察知する「識別感覚」と、自分の体を維持・操作する「原始感覚(触覚・固有感覚・前庭感覚)」に分けられます。
  • 感じ方の個人差:センサーの感度には個人差があり、刺激を強く感じすぎる「過敏」や、感じにくい「鈍感」という調整の個性が生じます。
  • 行動に現れるメッセージ:耳をふさぐ、立ち歩く、姿勢が崩れるといった行動は、脳が刺激の強弱をコントロールしようとする結果です。
  • 4つの反応パターン:刺激への反応は「低反応」「感覚探索」「感覚過敏」「感覚回避」という4つのタイプで整理することで理解しやすくなります。
  • 異常ではなく適応:気になる行動は病気や異常ではなく、その子が持つ独自の感覚の世界に精一杯適応しようとしている自己調整の姿です。
  • 防衛本能としての側面:大人が眩しい時に目を細めるのと同様に、子どもにとっても自分を守るためのごく自然な反応といえます。
  • 遊びと環境の重要性:感覚は無理な特訓で鍛えるものではなく、楽しい「遊び(感覚統合)」と「安心できる環境」の中で育まれていきます。

センサーである感覚

感覚には様々な種類が存在します。感覚とは、体の内外部から刺激を受け取り、その刺激を体で感じやすくする為のいわば体のセンサーです。

これには大きく、【識別感覚】と【原始感覚】に分けられます。
識別感覚周囲の情報を察知する感覚であり、
原始感覚体を維持・操作する為の感覚です。

この内容については、別の記事で紹介しておりますのでご参照ください。
【人間を形作る感覚とは!? 子どもの発達に関する感覚とは何かを紹介】

更に、この感覚の内、原始感覚と呼ばれる感覚は特に自分の体をコントロールする為に必要な感覚と紹介しております。その感覚が触覚・固有感覚・前庭感覚と言います。

体を整える為に超重要!?感覚3種類①触覚・固有受容覚(体性感覚)編
体を整えるのに超重要!?感覚3種類②前庭感覚編

詳しくはこの記事もご参照ください。

固有感覚は【体のセンサー】であり、前庭感覚は【バランスのセンサー】です。

感覚には個人差がある!

【識別感覚】【原始感覚】にも実は、感じ方の個人差がある事はご存じでしょうか?

例に挙げてみますと、

聴覚(音が聞こえるセンサー)→ 人混みの音が気になる。
嗅覚(匂いがわかるセンサー)→ 人よりも匂いが気になる

など、識別感覚では、イメージがつきやすいと思います。

このように感覚には感知する刺激の調整は個人で異なります。

いわば、受ける刺激が強すぎたり、弱すぎたりする場合があるという事です。
この刺激の強弱がある中で子どもはそれを体の中でコントロールしようとし、そのコントロールをする様子は行動の様子で現れます。

先ほど説明した内容を参考にしてみますと

【聴覚】→ 聞こえすぎる(人混みの音が気になる)→ 耳を両手でふさぐ

このように、両手で耳をふさぐなどの行為で周囲にいる大人にもわかりやすいメッセージとして行動に現れます。

感覚の調整である低反応・過反応

先ほど説明した、刺激の強弱は図のようにして現れます。大きく4つに分類されます。

図で説明しますと

向かって右側が感覚を感じにくい「鈍感」であり、左に向かうほど感覚を感じやすい「過敏」になります。

更に縦軸で言いますと、上に行くほど自分から刺激を探しに行く、又は刺激を見つけると逃げるなどの自らの行動になります。

下に行くほど、感覚に対して受身的な行動となります。

少し難しいですが、左側の感覚の過敏の部分では、「感覚過敏」は刺激がたくさん入りすぎてしまい、体が防御態勢になっているイメージです。感覚回避は刺激を受け取るのを自ら逃げるという行動にしているという事になり、同じ過敏でも守る逃げる分けられているというイメージになります。

また受身的で感じにくい部分が「低反応」という行動です。これは一見ぼんやりしているように見えたりもしますが、感覚の面から言いますと、あまり刺激の入っていない状態と言えます。

感覚のこの様子から見て、感覚過敏や感覚回避に関しては刺激が強い部分に分類されますので相称して反応が強い意味で【過反応】と呼ばれる事があります。

又、それとは逆に、低反応と感覚探索は相称し【低反応】と呼ばれます。

感覚を感じやすい【過反応】と感覚を感じにくい【低反応】に分けられるという整理となります。

子どもの普段の行動を感覚の反応で見る

この部分に関しては、以前も他の記事で少し触れています。
気になるかたはこちらもご参照ください。

「ジャンプ」や「クルクル回る」には理由がある!子供の気になる行動を「感覚統合」で読み解く

今回は4つの分類を参考に子どもの行動を見てみようと思います。

1. 【低反応】(感覚の登録不全:鈍感×受動的)

脳に届く刺激が弱く、世界が「ぼんやり」見えている状態です。

勉強: 鉛筆を持つ力が弱すぎる、または筆圧が異常に強くなる(指先の感覚が鈍いため)。

粗大運動:

何もないところでつまずく、よく壁や人にぶつかる(自分の体の境界線が曖昧)。

姿勢が崩れやすく、椅子に座っていても「ぐにゃっ」と机に突っ伏してしまう(固有受容覚の入力不足)。

学習・生活面:

名前を呼んでも気づかないことが多い(聞き流しているのではなく、届いていない)。

服が汚れていたり、鼻水が出ていたりしても全く気にしない(触覚の低反応)。

2. 【感覚探索】(感覚欲求:鈍感×能動的)

足りない刺激を自分で「補給」しようと、激しく動き回る状態です。

勉強: じっとしていることが苦痛で集中が続かない。消しゴムをちぎる、鉛筆を噛むなどの行動で刺激を補う。

粗大運動:

高いところから飛び降りる、壁にわざと体当たりする(強い衝撃を求めている)。

常に体をゆすっている、またはその場でクルクル回り続ける(前庭感覚の渇望)。

学習・生活面:

授業中に立ち歩く、または座っていても手足が常に何かを触っている。

3. 【感覚過敏】(感覚防御:過敏×受動的)

小さな刺激が「痛み」や「不快感」として過剰に増幅されて届く状態です。

勉強: 隣の席の鉛筆を走らせる音、蛍光灯のチカチカが気になり、課題に集中できない。

粗大運動:

背中を触られるのを極端に嫌がる(不意の接触への恐怖)。

特定の遊具(ブランコや滑り台)を怖がり、足が地面から離れることに強い不安を感じる(重力不安)。

学習・生活面:

衣類のタグや特定の素材(靴下など)を嫌がり、着替えに時間がかかる。

4. 【感覚回避】(感覚回避:過敏×能動的)

不快な刺激を予測し、それを避けるための「防衛本能」が強く働く状態です。

勉強: 予定の変更や予期せぬ出来事に対してパニックを起こしやすい(環境をコントロールして安心を得ようとするため)。

粗大運動:

集団での活動を避け、教室の隅や静かな場所を好む。

手が汚れる活動(粘土、砂遊び、糊付け)を徹底的に避ける。

学習・生活面:

偏食が激しい(特定の食感や匂いを「危険物」と脳が判断している)。

上記の4つをイメージする事で子どもの行動が見えてきます。一見ふざけているように見えていたりやる気がないように見えていたりする様子も感覚の調整という観点で見るとその行動を理解できます。

この行動って異常?

これまで紹介してきた、感覚の低反応や過反応による子どもの行動。

「何もないところでつまづく」「常に体をゆすっている」「特定の素材の服を嫌がる」「手が汚れる活動を徹底的に避ける」……。

こういった行動を目の当たりにすると、「うちの子、もしかして何かの病気なんじゃ……?」「異常なんじゃないか……?」と不安になる保護者の方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、結論から申し上げますと、これらの行動は決して「異常」なものではありません。

これらは、その子が持つ独自の感覚特性、すなわち「感覚の偏り」に対する、その子なりの精一杯の適応しようとする姿なのです。

低反応の子であれば、脳に届く刺激が弱いという「ぼんやり」した世界の中で、何とか自分を保とうとして強い刺激を求めたり、逆に刺激が弱すぎて動きが鈍くなったりします。 過反応の子であれば、小さな刺激が「痛み」や「恐怖」として感じられる世界の中で、自分を守ろうとして過剰に反応したり、刺激から逃れようとしたりします。

それは、私たち大人が、強い光が眩しい時に目を細めたり、大きな音がうるさい時に耳を塞いだりするのと同じ、ごく自然な「防衛本能」や「自己調整機能」の現れなのです。

ただ、その反応の出方や強さが、周囲の環境や一般的な行動パターンと少し異なるため、目立って見えたり、生活の中で困りごとにつながったりしてしまうことがあるだけです。

感覚ってどうやって鍛えるの?――「トレーニング」ではなく「適切な遊びと調整」

ここまでの記事で、子どもの「困った行動」の背景には、それぞれの感覚特性(低反応・過反応・感覚探索・感覚回避)があることを紹介してきました。

「異常ではない」と分かっても、では「どうやってその感覚を良くしていけばいいの?」、「鍛えれば治るの?」という疑問が湧くのはごく自然だと思われます。

結論から言うと、この感覚調整を狙った療法が感覚統合療法sensory integration therapy
と呼ばれる方法があります。しかしながらこれはトレーニングではなく、

「脳が感覚情報を正しく受け取り、整理・処理できるように促す(統合する)」、そして「その子が過ごしやすいように環境を調整する」という2つのアプローチを組み合わせることが重要です。

これは、無理やり苦手な刺激に慣れさせる「特訓」ではなく、子ども自身が「楽しい」「心地よい」と感じる活動(=遊び)を通して、脳の発達をサポートするプロセスです。

感覚はつまり、子どもの遊びとその環境の中で育まれていくものなのです

まとめ

1. 感覚は人それぞれ異なる「体のセンサー」

感覚には、周囲の状況を知る【識別感覚】と、自分の体を操る【原始感覚】(触覚・固有感覚・前庭感覚)があります。このセンサーの感度(刺激の受け取り方)には個人差があり、刺激を強く感じすぎたり、逆に弱すぎたりすることがあります。

2. 行動から読み解く「4つの反応パターン」

感覚の調整がうまくいかないとき、子どもは体の中のバランスを取ろうとして特徴的な行動をとります。

反応タイプ脳の状態代表的な行動の例
【低反応】刺激が届きにくく、世界がぼんやりしている姿勢が崩れやすい、名前を呼ばれても気づかない
【感覚探索】足りない刺激を自分で激しく補給しようとするクルクル回り続ける、わざと壁に体当たりする
【感覚過敏】小さな刺激が「痛み」や「恐怖」として届く特定の服の素材を嫌がる、不意の接触を怖がる
【感覚回避】不快な刺激を予測して、必死に逃れようとする手が汚れる活動を避ける、予定変更でパニックになる

3. 「異常」ではなく、精一杯の「適応」

これらの行動は、決して「異常」や「わがまま」ではありません。脳に届く刺激をなんとか調整しようとする、子どもなりの精一杯の適応の姿であり、大人にとっての「眩しいときに目を細める」のと同じ自然な反応です。

結論:「特訓」ではなく「遊びと環境調整」

感覚を整えるために必要なのは、無理なトレーニングではありません。

  • 遊び(感覚統合療法): 子ども自身が「楽しい」と感じる遊びを通じて、脳の処理機能を育む。
  • 環境調整: 苦手な刺激を減らす工夫をし、その子が過ごしやすい環境を整える。

感覚は、子どもの主体的な「遊び」と「安心できる環境」の中で、健やかに育まれていくものなのです。

参考・引用文献 【子どもの理解からはじめる感覚統合遊び】 加藤 寿宏 監修

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