【この記事の30秒まとめ】忙しい親御さんへ
今日からできること: 原因を血眼になって探したり、トイレの回数を言ったりせず、「淡々とスルーする(気にしない)」こと。これがセンサーの興奮を鎮める最大のケアです。
体には異常なし: 「心因性頻尿」は、膀胱の病気ではなく、熱中している時や睡眠時には症状が出ないのが特徴です。
親のせいではありません: 原因は「大きなストレス」ではなく、成長過程における「自律神経(緊張)のアンテナ」がたまたまおしっこセンサーを刺激しているだけ。お子さんが今、心と体をコントロールする練習をしている**「がんばっている証拠」**です。
「うちの子、さっきトイレに行ったばかりなのに、また?」 「出かける直前に行ったのに、車に乗ったらすぐ『トイレ』って言う…」
ネットで調べてみると、出てくるのは「心因性頻尿(しんいんせいひんにょう)」という言葉。「原因は心のストレスや不安」と書かれているのを見て、「私の育て方が悪いの?」「家庭で何か追い詰めているのかな…」と、不安や申し訳なさで胸がいっぱいになっている親御さんも多いのではないでしょうか。
この記事は、子どもの発達と暮らしをサポートする専門家「作業療法士(OT)」が、3回に分けてお届けする連載の【第1回:安心編】です。
まずは、ネットの情報に振り回されて不安になっている親御さんの心をふっと軽くし、明日からお子さんを見る目がガラリと変わる「新しい視点」をお伝えします。
関わり方については別の記事で解説しています。
「何もしないで見守る」ってどういうこと?作業療法士が教える、心因性頻尿の子どもが安心する声かけと感覚遊び 関わり編をご参照ください。
おうちの外での関わり方については、こちらで解説しております。
集団生活での頻尿への焦りを安心に変える!作業療法士が教える、おうちの外で子どもを支える「チーム連携術」【連携編】こちらを参照ください。
1. 「心因性頻尿」ってどんなもの?まずは客観的に知ろう

まず、医療の現場(お医者さん)で言われる「心因性頻尿」の基本的な特徴を整理しましょう。
- 体には異常がない: 膀胱(ぼうこう)や尿道の病気ではなく、おしっこの量自体にも問題はありません。
- 回数が多い: 目安として起きてから寝るまでに8回以上ですが、回数そのものよりも、本人が「何度も行きたくて困っている」という自覚がある状態を指します。
- 特徴的なサイン: 3〜5歳の幼児や、小学校低学年に多く見られます。そして、「大好きなゲームに熱中している時や、寝ている時はおしっこが気にならない(トイレに起きない)」という大きな特徴があります。
「もしかして?」と思ったら、まずは学校生活や習い事に支障が出ているか(授業中に尿意が怖くて不安になる、発表会前に集中できないなど)を観察してみてください。
迷ったら、まずは「体のチェック」から

もしお子さん自身が困っている様子があれば、まずは小児科や泌尿器科を受診し、体に病気が隠れていないか(膀胱炎など)を確認してもらうのが最初の安心ステップです。
[日本泌尿器科学会]の公式ガイドラインでも、受診の際には、いつトイレに行ってどれくらい出たかを記録する「排尿日誌」をつけることが推奨されています。日誌をつけることで、お医者さんも正確な診断がしやすくなります。 ※具体的な頻尿の基準や排尿日誌のフォーマットなどは、日本泌尿器科学会が一般向けに公開している「こんな症状があったら:頻尿(尿が近い、回数が多い)」のページにも詳しく記載されています
まずは病院で「体に異常はないよ」と言ってもらうこと。それが、心因性頻尿と上手に向き合うためのスタートラインです。
2. 作業療法士の視点:おしっこは「体を守る心のブレーキ」

「体に異常がないのに、なぜ何度もトイレに行きたくなるの?」 「やっぱり、何か強いストレスを感じているんじゃ…」
そう考えてしまう親御さんに、私たち作業療法士が臨床の現場で最も大切にしている「子どもの行動の見方」をお話しします。結論から言うと、決して親御さんの愛情不足でも、育て方のせいでもありません。
「心因性=ストレス」と聞くと、何か大きなトラウマや深刻な問題を想像しがちですが、子どもの場合は違います。 子どもは今、成長の途中で「自律神経(体を緊張させたり、リラックスさせたりする神経)」のバランスを一生懸命にコントロールしようとしています。
大人にとっては些細なこと――「クラス替え」「発表会の練習」「ちょっと風邪気味な日」「お友達との小さないさかい」。これらに対して、子どもの心と体はピンと緊張します。その緊張(アンテナの感度が高くなった状態)が、たまたま「膀胱のセンサー」をパチッと刺激してしまっているだけなのです。
つまり、何度もトイレに行く行為は、わがままや病気ではなく、子どもが「今、ちょっと緊張しているから、トイレに行って安心しよう」と、自分の心と体のコンディションを一生懸命に整えようとしている「防衛反応(がんばっている証拠)」です。
「心因性の頻尿」は、子どもがその子なりに社会や環境に適応しようと、心と体でバランスをとっている成長のサインなのです。
3. 今、一番大切なのは「何もしない」という最大のアプローチ

ネットで検索すると、よく「心因性頻尿の治し方」として、原因を突き止めようとする記事が見つかります。 しかし、「何がストレスなの?」と理由を突き止めようと犯人探しをはじめると、親も子も追い詰められてしまいます。
実は、この段階で最も効果的なアプローチは、「トイレに行く行動を、大人が過剰に気にしないこと」です。
「またトイレ?」「さっき行ったでしょ!」という言葉は、子どもの脳に「私はおしっこで困っているんだ」という強い緊張を植え付け、さらにセンサーを過敏にさせてしまいます。何度もトイレに行くときは、「いってらっしゃい」と淡々と送り出してあげる。これだけで十分です。
「病気なのかな…」という悲観的な視点から、「あぁ、今この子は自分をコントロールする練習をしているんだな」という応援の視点へ。 親御さんが「まぁ、いつでもトイレに行けばいっか」とドンと構えている安心感こそが、子どもの緊張をほぐす何よりの特効薬になります。
関わり方については別の記事で解説しています。
「何もしないで見守る」ってどういうこと?作業療法士が教える、心因性頻尿の子どもが安心する声かけと感覚遊び 関わり編をご参照ください。
お家の外の関わり方についてはこちらで解説しています。
集団生活での頻尿への焦りを安心に変える!作業療法士が教える、おうちの外で子どもを支える「チーム連携術」【連携編】を参照ください。



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