精神科領域において、行動制限の最小化と早期退院に向けた診療報酬上の評価が年々厳格化される中、患者の危機状態を未然に防ぐ「クライシスプラン(CP-J)」の重要性は高くなっています。
しかし、現場で作成されるプランの多くが、致命的な問題点を孕んでいます。
クライシスプランの概要については別の記事で紹介しております。詳しくはこちらからご参照ください
精神科クライシスプランの「作り方」をアップデートせよ:管理から権利擁護(CP-J)へ繋ぐ共通言語
やってはいけない致命的な作成ミス「スタッフ都合の評価書」化

日常業務に追われる中でCP-Jを作成すると、
無意識のうちに「スタッフにとって管理しやすい、都合の良い解釈」だけで構成されたプランが完成しやすいです。
これはもはやクライシスプランとは言わず、単なる「患者管理マニュアル」に成り下がります。
これを防ぐ唯一の手段が、患者本人とスタッフが共同で作り上げる「WE(私たち)」の視点です。
「権利擁護」を必ずプランに反映させる

現在の精神科医療において、単なる症状管理は通用しません。
患者の希望:「この状態の時は、こう対応してほしい」
スタッフの職務「状態悪化時は安全確保のため〇〇の手続きをとりますが、その中で『こうしてほしくない』事はありますか?」
この両者のすり合わせ(合意形成)をプランに組み込むことが非常に大切です。
これが「権利擁護」であり、現代のクライシスプランを真の危機回避ツールへと昇華させる方法です。
実践:フェーズ別「WE」の引き出し方(青→赤→黄の法則)

効果的なCP-J作成には、手順に絶対的な方法があります。
ここからは私が臨床で培ってきた作成手順を精神療法・作業療法的視点から解説していきます。
STEP 1: 青(安定している状態)から始める

まず大切なのは、青色の「安定している状態」から聞いていく事です。
絶対に「調子が悪い時のこと」から聞いてはいけません。
それは、関係性が構築されていない段階でのネガティブで心をえぐる質問は、患者様の心理的防衛を高めてしまう可能性が非常に高いです。
STEP1の目的
目的: 患者の能動的な発言を引き出し、プラン作成の心理的ハードルを下げる。
アプローチ: 「普段、一番リラックスしている時はどんな状態ですか?」「何をしている時が調子が良いですか?」
STEP 2: 赤(危機状態)に飛ぶ

黄色(注意サイン)を飛ばし、最も極端な「赤」を作成していきます。
青(最良)を出した直後な為、その比較で赤(最悪)のイメージが共有しやすくなります。
基準の提示: 「これ以上悪化すると、入院や他者の強制的な介入が必要になるラインはどこですか?」
と、医療者側の基準も明確に提示し、すり合わせる。
STEP 3: 最後に黄色(注意サイン)を深掘りする

ここがクライシスプランの根幹であり、最も時間をかけるべきステップです。
なぜ難しいのか
黄色は「安定(青)」でも「危機(赤)」でもない、グラデーションの中間地点です。
患者自身も自覚しにくく、見落とされやすい項目となっています。
介入の意義
クライシスプランの真の目的は、「黄色のサインに気づき、赤に行かないようにする。早期に青に引き戻すこと」です。
睡眠リズムのわずかな乱れや、特定のルーティンへの過剰な執着など、
過去の入院に至った「前兆」を、患者と共に徹底的に言語化し、再認識を促していきます。
まとめ
クライシスプランは、青→赤→黄の順で作成することで初めて、具体的かつ把握しやすい
現場で機能する「生きたツール」となります。
次回の記事では、この過程に具体的な「支援内容」と「権利擁護の文言」をどう落とし込むか、
現場で即使える対話方法と記載テンプレートを公開していきます。



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