精神科デイケア・パラダイムシフト:多職種カオスを「最強のスペシャリスト集団」に変える生存戦略

精神科関連

この内容は精神科・福祉領域・デイケアに努めているスタッフに向けて送る記事です。
この記事には、精神科デイケアのリアルな業務風土を記事にしています。

この記事を読むことでデイケアの存在がポテンシャルと将来性に満ち溢れたビジョンになります。

1. Google検索には絶対載らない精神科デイケア「何でも屋」のリアル

精神科デイケア。あまり馴染みがない医療スタッフも多いと思います。
ネットで検索すると、一般的な概要は出てきます。しかし、いくら探しても、実業務のリアルなポイントを突いた記事は出てきません。それは、表向きに謳われている業務と、実際に従事している業務の間に、圧倒的なギャップが存在するからです。

デイケアの一般的なスケジュールを覗いてみましょう。朝の申し送り、診察補助、出席・体調確認、昼食配膳、日中活動(食出し)、専門性と無関係な電話応対、家族対応、急変時の総力戦、入浴サポート。 イメージ通り、完全に「何でも屋」です。 職員・利用者が朝から夕方まで同じフロアで過ごす「運命共同体」の中では、これら全スタッフ共通の業務を卒なくこなすことがスタンダードとして求められます。ここを単なる「雑務」と捉えるか、「戦略的接点」と捉えるかで、デイケアの未来は決定的に分かれます。

2.そもそも精神科デイケアという場所

精神科デイケアという場所は一般的に、以下の内容で説明されます。

精神科デイケアとは?心と体のリハビリテーションの場

精神科デイケアは、精神疾患を抱える方が、地域社会での安定した生活や社会復帰を目指して「心と体」のリハビリテーションを行う通所型の外来治療の一つです。他の参加者と交流しながら様々なプログラムに取り組みます。又、一人ひとりの目標達成を支援するための「治療の場」として位置づけられています。

どのような人が利用するの? うつ病や統合失調症、双極性障害、不安障害、発達障害などの精神疾患があり、入院の必要がなく比較的症状が安定している方が主な対象です。

主な目的と期待できる効果 精神科デイケアを継続的に利用することで、以下のような効果が期待できます。

  • 生活リズムの確立と体力向上
  • 対人関係スキルの向上
  • 病気の再発防止
  • 安心できる居場所の確保

どのようなプログラムがあるの?
施設によって特色は異なりますが、個人の目標に合わせて以下のようなプログラムが組み合わされて提供されます。

  • スポーツ・創作活動: ヨガ、卓球、ウォーキングなどの運動系や、料理、手芸、絵画といった文化・創作系の活動を通して、心身のリフレッシュや意欲の向上を図ります。
  • 心理教育・SST(ソーシャルスキルトレーニング): 病気や薬との上手な付き合い方を学ぶ勉強会や、ロールプレイングを通して実際の対人コミュニケーション技術を練習するプログラムがあります。
  • 就労・復職支援: パソコンスキルの習得や履歴書の作成、模擬面接など、将来的な就職や復職(リワーク)に向けた実践的な準備を行います

という事が一般的に言われています。

3. デイケアは職種技能が「収束」と「分離」を繰り返す特殊な場所

精神科デイケアでは、上記の概要の通り、通所して滞在しながら、他者交流を通して生活上の問題点を支援する場所です。
その為、職員・利用者は常に同じフロアにおり、朝から夕方近くまで共同で一日を過ごしています。

この状況下でデイケアのスタッフの業務内容は「収束」と「分離」を繰り返すのです。
「収束」と「分離」とはどのようなものでしょうか?

デイケアスタッフは共通業務(収束)を行う一方で、職員の頭には各々の職業アイデンティティが刻まれています。

  • 作業療法士: 作業的ニーズの具現化と月例イベントの企画・運営
  • 看護師: 安全・健康管理全般と急変時のアクション管理
  • 精神保健福祉士: 通所調整、家族・関係機関との連携、権利擁護
  • 管理栄養士: 健康管理、疾病予防に関する食生活習慣のマネジメント
  • 公認心理師: 心理カウンセリングと、職員へのコンサルテーション

業務は「収束(同じことをする)」しているのに、考え方は「分離(専門視点)」している。
このいびつな集団力動を放置すると何が起きるか。
日々の出来事に対し、ベクトル(方向性)の違いによる意見の食い違いが頻発します


皆が正しいことを言っているのに話がまとまらず、結局は発言権の大きい個人の発言力で勝敗が決まる。これでは若手は口を開きません。

4.パラダイムシフト:「毎日のリエゾン」がもたらす圧倒的シナジー

精神科デイケアとは、会議室ではなく日々の混沌とした現場の中でリアルタイムに多職種が評価を下す「毎日がリエゾンチーム」なのです。
このカオスな業務展開を逆手にとり、全人的アプローチの土壌とする方法論こそが、デイケア最大の強みとなります。

この画像のように、一つの出来事に複数の専門知識が一同に集約されます。

この内容は同じ業務(収束)で起きている事象を壮大な力を持つ専門職集団が一同で評価した時、
絡み合う専門性が協力なシナジーを形成するという事です。

5.デイケアの専門性から見る「分離」の再定義

という事はつまり、職種アイデンティティ(考え方)とは、同じ業務をこなしている時、自分達の観る着眼点はここだというポイントを各々が誇りをもって主張する事が大事です。

さらに必要なのは、その誇りを否定する事なく、職種間で共有する事がとても大切なのです。

私の表現でいう「分離」とは、同じ協働作業をしながらも、考え方「分離」はそれぞれここがポイントでここが大事だという事をデイケア内でルール化する事です。

ポイント 収束と分離の再定義

分離:協働作業の元に「PSWはここが着眼点」というタスクベースの専門職としての視点を主張する。縦割りにならない事。

収束:誰が配膳やレクをやろうが、その瞬間に「OTの視点(環境適応)」「PSWの視点(社会接続)」というフィルターを持てるか。カオスな業務展開を逆手にとり、全人的アプローチの土壌とする方法論。

7.警告! 分離という名の曲解。「私は〇〇だからこの仕事はやらない」

デイケアで従事する職員にとって、犯してはならない事が、職種の業務を縦割りしすぎてしまう事です。縦割りとは、文字通り、横とのつながり(同じ同僚)との業務はやらないという言葉の比喩です。

確かに専門性は大事ですが、先ほどのシナジーを考えると同じ業務を協働で行う事が何倍も得られる考えが変わりますし、その知見は必ず利用者に還元されます。

「私は作業療法士だからプログラムしかやりません。食事の見守りは看護師の仕事でしょう」

という安直な考えに至るとシナジー形成どころか職場風土を阻害します。注意が必要です。

point 自ら敷居を作る縦割りと任せられるでは大違い。デイケアでの専門業務

ただ、精神科デイケアでも専門的に特化した業務を担う事は多いです。看護師による救急対応の時のシミュレーションリーダーや管理栄養士の健康栄養教室など。

どれも専門性に特化した尊敬に値する業務です。この業務は共通の業務を免除するほど推進しなければなりませんし、利用者様の還元に繋げなければいけません。

ただ、この業務はデイケア内でコンセンサス(同意)を必ず取る必要があります。

一方的に、個のスタッフがやりたいだけの独断でやると継続力や還元に必ず支障が出ます。
ガバナンスが大事という事ですね。

8. 結論:希望の箱舟としての「最強のスペシャリスト集団」

精神科デイケアという場所は、実は訪問看護でいう所のリエゾンチームなのです。

精神科デイケアは、いうなれば、毎日がリエゾンチームで稼働しているタイムリーな多職種支援のハブ(集積)団体と言えます。

これは、医療機関で実現しようとすると、せいぜい会議の1時間やカンファレンスでの会合のみ発揮できる状態です。

つまり、デイケアという場所は、
団結力を高めるだけで医療よりにも福祉よりにも、更には圧倒的に利用者の地域生活を牽引する職能団体と言えます。

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